今年初めに観たドラマ「サイコだけど大丈夫」

去年から観ていて、やっと観終わったドラマ。少し前に「居るのはつらいよ」を読んでいたこともあってか、セラピーとケア、ケアの周りの人たちの余韻が残るまま、このドラマに入っていった。

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この話は言うなればケアの話だと思う。居るのはつらいよはデイケアの話だったが、こっちではムン・ガンテ(弟)の人生そのものがムン・サンテ(兄)のケアになっている。

自閉スペクトラム症の兄ムン・サンテと2人で暮らしている弟のムン・ガンテ。そして、童話作家のコ・ムニョンの3人が主人公のドラマ。ガンテが生まれる前に父は亡くなっていて、母も小さい頃に死んでしまう。兄の面倒を見るために産んだと母から言われてしまうガンテは母亡き後も、ずっと兄サンテのケアをしている。

職業としても、精神病院の保護司をしているのだが、蝶が飛ぶ季節になると調子が悪くなる兄のために、年に1度引っ越しをし、職場を変えている。そのそばにはいつも年上の友人ジェスがおり、ジェスもこの兄弟と一緒にいつも引越しをしているため、デリバリーの仕事ばかりしている。

そして、また引越しの時期になったとき、幼馴染から、生まれ育った故郷のOK精神病院を紹介してもらい、故郷に戻ったところから物語が動く。

そこにはおどろおどろしい古い城があり、そこに童話作家のコ・ムニョンが住んでいる。コ・ムニョンの母も作家だったが、今はもういない。しかし、今はいないはずの母にずっと縛られているムニョンは、プライドが高く、いつもとても偉そうにしているのだけれど、母に言われたまま髪を切ることもできず、城の中では悪夢にうなされている。

2人は幼い頃にも出会っていて、また再会する。ガンテはOK精神病院で働き、ムニョンの父はそこに入院している。サンテは院長から病院の壁に絵を描く仕事をもらう。OK精神病院にはいろいろな人がいて、それぞれにエピソードがあり、ひとつひとつ切り離して観てみても印象に残るエピソードもいろいろある。

その中でも親子に関するエピソードが多い。無理心中を試みようとする父と拒む娘、見てほしくて、構ってほしくて裸になる議員の息子、娘が亡くなった現実を受け入れられずに妄想の世界に居続ける母、幼い時の虐待の経験から別人格が現れる占い師…。

それぞれが首につながっているヒモを切れずに苦しんでいる。ムン・ガンテもコ・ムニョンも、苦しんでいる。

このドラマの中で印象に残っているセリフがある。

「ムンガンテはムンガンテのものだ」

「だから忘れるな。忘れずに乗り越えろ。乗り越えられなかったら、いつまでも、魂が成長しない子供のままだ。」

この2つはいろいろな大事なシーンで何回か出てきた。

そして「人は弱いから寄り添うもの」という院長の言葉。

ラスト、不気味な仮面をつけた少年、中身のない空き缶姫、箱を被った息苦しいオジサンの3人はどう変わったのか。どうして変われたのか。

そこにはたくさんのケアがあった。ガンテが好きでムニョンを放っておけないジュリ、3人を気づかい、おいしいものを作って食べさせるジュリのお母さん、ムニョンの社会につながる窓を開け続けようとする出版社の社長、いつもそばにいるガンテの年上の友だちジェス…。

たった1人いっぱいいっぱいになって兄のケアをしていたガンテは、周りの人たちのケアをうけ、サンテからもムニョンからもケアしてもらうようになって初めて表情を取り戻す。

自分以外の人のケアだけを続けていると、失われるものがあるのかもしれない。「居るのはつらいよ」でデイケアがケアする人にとって苦しくなっていく原因も、そこにあるのかもしれない。何かが奪われてしまうのかもしれない。

しかしそう考えると韓国みんなのお母さん役、キム・ミギョン演じるジュリのお母さんは大丈夫なのだろうか。ケアするばかりのような気もするけど、表情は明るい。つらいこと苦しいことを乗り越え、魂が成長して大人になるとああなるのだろうか。その点、セラピー中心の院長はまだまだジュリのお母さんには叶わない気がする。もちろん院長も魂が成長した充分な大人で、OK精神病院に集まる人たちの居場所を作り続ける、大事な人なのだけれども。

院長が蝶の絵を描いてほしいと話し、サンテが「忘れずに乗り越えろ」と言いながら、衣装ケースには入らずに、蝶の話をし、蝶を描く練習をしていくのはセラピーだったのだろう。成長に向けての一歩。サンテはその一歩を踏み出したことで、ガンテとは別の道を歩き始める。

このドラマの中での蝶の意味はとても深い。

最後に1番心に残ったシーンはサンテがお母さんに自分の絵本を読んであげるところ。とてもよかった。サンテが、本当にすばらしかった。サンテ役のオ・ジョンセさんの演技が、本当に良かった。

適切なケアが圧倒的に足りなかったガンテとムニョンはお互いの、そして周りの人たちのケアを受けて自分自身になり、ケアを受ける一方と思われていたサンテはセラピーを通して痛みを乗り越えて成長していく。

このドラマ、メインの3人もいいけど院長やジュリのお母さんなど、脇役の人たちもよい。韓国ドラマは脇役の人たちがみなとてもいい。いろんなドラマでいろんな役で出てるから、あ!また出てる!と思うのだけど、演技が上手いからすぐにドラマに引き込まれる。

それからこのドラマには絵本が出ている。ドラマの中でも内容が紹介されているけど、実際に絵本も出版されていて、日本語訳も出ているようだ。韓国語だけど脚本も販売されているので、ぜひ買って読みたいと思う。

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