「主戦場」

8月の上旬にポレポレ東中野の「政治映画はサスペンスである」という特集上映で、「主戦場」を観てきました。

映画は慰安婦問題について、「強制連行」「性奴隷」「20万人」「歴史教育」などのキーワードで区切られており、

*「強制連行」は本当にあったのか?

*彼女たちは「性奴隷」なのか、「売春婦」なのか?

*「20万人」という数字はどこから出てきたのか?

などについて、様々な意見を持つ27人がインタビューに答え、独自の見解を述べています。

27人以外にも強制連行について安倍首相が答弁したシーンや河野談話も流れます。

慰安婦問題というと、重く難しいと敬遠されがちなのですが、キーワードで区切られていて、その背景や言葉の説明などもあるからか、わかりやすく頭に入ってきました。

そして、ある程度内容が頭に入った後なので、インタビューに答えている人たちの言い分、たたずまい、その言葉を聴いた時の自分の気持ちに集中することができました。

文字だけでは感じ取れないかもしれない、その人そのものが醸し出す雰囲気というものも、インタビューでは見えてきます。

映画を観ていて感じたのは

歴史認識の問題、どちらが正しいか、事実かということ以上に、そこに浮かび上がってくるもっと別の感情的な何か。傍観者にはなり得ないザワザワした何か、でした。

特にザワザワとしたのは、

「強制連行」はなかったのかについて

官憲が家に押し入って、人さらいのように連れて行ったわけじゃないから、なかったとする答弁や、

「性奴隷」ではないのかについて、そこから逃げ出すことなど不可能な状況だったにもかかわらず、お金もあったし、ピクニックに行ったり買い物したりしていたから、性奴隷ではないとする考えを聴いた時。

少し前、日本で実父から受けた性被害を訴えたにもかかわらず、実父が無罪になる裁判が続き、問題視されていたけれど、それも「抗拒不能」ー全く抵抗できなかった状態ではなかったからという理由で無罪になったことを思い出しました。

そしてラストの初めて慰安婦の体験を話したキムハクスンさんの証言。

戦後慰安婦であったことをなかなか話せず、やっと証言をしたら、証言が信頼できないと嘘つき呼ばわりされたハルモニたち。

戦後すぐの賠償問題の時にはまだ慰安婦のことは知られておらず、2015年の日韓合意ではハルモニたちを置き去りに合意に至っており、映画の冒頭はその報告に来た韓国政府要人に詰め寄るイヨンスさんの姿、ラストは初めて名乗り出たキムハクスンさんの証言で終わっています。

このハルモニたちと関係のないところでうごめくものがなんと多いことか。

そして、

「どんなに頑張っても中国や韓国は日本より優れた技術が持てないからプロパガンダで日本を貶めている」

「日本人は子どもの頃から嘘をついちゃいけませんよと(教えられてきた)」

「(中国や韓国の)嘘は当たり前っていう社会と、嘘はダメなのでほとんど嘘がない社会(日本)のギャップだというふうに、私は思っています」(衆議院議員 自由民主党 杉田水脈氏)

「フェミニズムを始めたのはブサイクな人たちなんですよ。ようするに誰にも相手にされないような女性。心も汚い、見た目も汚い。こういう人たちなんです」(テキサス親父マネージャー 藤木俊一氏)

「国家は謝罪しちゃいけないんですよ。国家は謝罪しないって、基本命題ですから。是非覚えておいてください。国家はね、仮にそれが事実であったとしても、謝罪したら、その時点で終わりなんです」(新しい教科書をつくる会 藤岡信勝氏)

インタビューの中で本気でそう話している人がいることの驚き。

97年、中学校教科書のすべてに慰安婦の記載があったけれど、2012年にはその記載は完全に削除されているということも初めて知りました。

他にも、映画の中にもあったヘイトスピーチ。

あの憎しみはどこから来るのだろう。

いつまであの憎しみにさらされなければならないんだろう。

なくすためには何をしたらいいんだろう。

韓国で日本について、日韓関係について話をすると、「この部分は日本はおかしいと思う。だから好きになれない。」という意見はよく聞いたことがあります。

けれど、日本で行われるヘイトスピーチのような、感情に任せて、毛嫌いするような、突き刺さされるような言葉を浴びせられたことは、6年間住んでいて1度もありませんでした。

慰安婦問題、あいちビエンナーレ芸術祭、ホワイト国、DHC…。日韓の間でいろいろなことが起きています。

両国共に政治に利用されていることも多い。けれど、いろいろなことを言っている人たちの言葉を、表情を、行動をしっかり見ていけば、国の違いでお互いを憎しみ合うことにはならないはず。

そうならないように努力することはできるはず。

そして、ラストの監督からの問い。

自分はどう思うのか、ぜひ一度観て、関わっていってもらえたらと思います。

ポレポレ東中野

政治映画はサスペンスである特集

8月23日までやっています。

ぜひ。

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